2013年11月10日日曜日

神経回路網の数理



 甘利さんが1978年(脂の乗った40代)に書いた少し古典(?)。内容は統計神経力学、神経場理論、学習理論の3本柱の数理モデルとその考察。

 甘利さんはやっぱり頭がいいんだと、再認識させられる。僕でも分かるほどシンプルなモデルなのに、おーおーなるほどそうかも気付かされる。オイラーの公式が美しいと言ってる数学者達の気持ちが少しわかる気がする。上手く表現できてないけど、とにかく頭いい。

 実験でも理論でもそうだけど、いい研究というのは、本質的なもの数個だけを残して他はギリギリまで削ぎ落としてシンプルな系になっている。多分そこまでしないと人間の頭では理解できないのだろう。

 ちなみに、利根川さんは系(海馬、fear conditioning、免疫はよく知らない)もシンプルだけど、それ以上に問題設定とコントロールの置き方が秀逸だと思っている。

 問題設定(仮説)、実験系、コントロール、にどこまで鋭利に考えられるか、削ぎ落とせるかが勝負な気がする最近。言うは易し行うは難し、だな。

2013年11月6日水曜日

Neural coding during active somatosensation revealed using illusory touch.

久しぶりに本業に近い論文紹介。少し前の論文だけど、自分の中では今年最大のヒット。

Nat Neurosci. 2013 Jul;16(7):958-65. doi: 10.1038/nn.3419. Epub 2013 Jun 2.
Neural coding during active somatosensation revealed using illusory touch.
O'Connor DH, Hires SA, Guo ZV, Li N, Yu J, Sun QQ, Huber D, Svoboda K.

タイミングvs発火率 神経が情報をコードしているのはどちらか、という議論があるがこれはそれに対して一つの答えを出している論文。結論としては、発火率。

手法は、ヒゲ知覚によるGo no-Go task時のS1の神経活動をチャネルロドプシンで再現するというもの。ヒゲのタッチと神経細胞の発火のタイミング(を模倣した刺激)をずらしても課題の成績に変化は無かったが、PV(抑制性)細胞の活性化による興奮性の発火率減少は成績を悪くしたため、上の結論に至っている。ヒゲの根元に働く張力(?)をコードしているのでは、ということだ。

ms単位で神経発火を再現する技術も凄いけど、問題設定が逸脱。分かりやすい上に、超重要。なぜNature Neuroscienceなのかがわからない(わけでもないけど、コントロール実験とか)。結論も、もちろん部位や課題によってはタイミングが重要なことがあるのだろうけれども、それでも長年の議論に一定の答えを示したのは凄い。

Go no-Go早くしたい…。アイデアはあるけど、その前に早く今の仕事に片を付けなければ。

2013年11月1日金曜日

つまり科学者は何をしているのか?

仕事は?って聞かれて、研究職(まだ学生だけど)って答えると、研究者って何するの?とか、難しそうとか、頭いいんだねとかって言われる。
半分馬鹿にしているのかなと思うこともあるけどそれは置いといて、図らずも僕も科学者の端くれとなってしまったので、科学者が何をしているのかというのを考えてみる。

結論から言うと、多分科学者がやっていることは次の3つのうちのどれかだと思う。

  • 観察
  • 削減
  • 追加

以上。終わり。簡単w

僕の理解では、科学のプロセスはこの図一枚に収まる。

Step 1. 関係性の発見

データを眺めて矢印を見つける。
例えば、テストの点数を上げる方法を知りたいとする。まずはどんな行動とテストの点が関係するのかを知るために、いろんな文献やデータを集めてくると思う。朝食を食べているかとか、よく寝ているかとか、トイレに行く頻度とか。それらとテストの点数を比較して(相関をとったり、テストできる人の共通項を見つけたり)、テストの点と関係ありそうなものを拾ってくる。これが統計的に有意であればとりあえずOK。観察というのが最適な表現かは分からないけど、色んなものの関係を観るという意味で。
ここでは「勉強量が多い人は(赤丸)、テストの点も高い(黄三角)」という結果が出たとする。矢印が両方向についているのがポイント。


Step 2. 因果関係の発見

対象をいじって矢印の方向を調べる。
これだけではまだ不十分。なぜなら「勉強量が多い(赤丸)から、テストの点が高い(黄三角)」(Step2 左側)と、「テストの点が高い(黄三角)から、勉強量が多い(赤丸)」(Step2 右側)という二つのうちのどちらかまだわかっていない。どっちが正しいか、またはどっちも可能性があるかというのを調べなければならない。つまり、矢印の方向を決めなければならない。

ちなみに、このどっちが原因でどっちが結果かというのがわかっている関係を因果関係という。ちなみにStep1は相関関係ということが多い(相関だけに限らないんだけど)。

じゃあ実際にはどうするか。考え方としては、「片方」を意図的に操作したときに「もう片方」に影響が出れば、「もう片方」の変化は「片方」を動かした結果なので「片方→もう片方」の因果関係が成立している、というもの。例で言うと、「勉強量(赤丸)を操作したときにテストの点(黄三角)が変化するか否か」。

じゃあ操作するって具体的に何するの?ってなると、することは勉強量を減らすか(図のa, または勉強しない)、増やすか(図のb, または勉強してなかった人にさせる)だけ。これでテストの点数に変化が出れば、因果関係あるってことで、変化が無ければ因果は無いってことになる。単純には。もちろん逆「テストの点(黄三角)を操作したときに(±20点で結果として返すとか?!)勉強量(赤丸)が変化するか否か」もすべきで、それで変化がでれば黄三角→赤丸の因果関係もあり得ると考える。

これが科学的研究法の概要で、またここまでやって初めて「勉強量を増やせば、(→)テストとの点が上がる」とか主張することができる。で、実際やっているのは
  • 観察 (Step 1)
  • 削減 (Step 2)
  • 追加 (Step 2)
以上。終わり。簡単w
要は、矢印を見つけて、それがどっち方向かを調べる。基礎とかはStep 1だけでも成果になることがあるし、応用とかはStep 2だけをしていることもある(気がする)。あと、入れ替えるっていうのも思いついたけど、これも元あったものを引いて別のを足すのでこの範疇内かと。

実際は、Step 1の関係が直接的なのか間接的なのかとか、青四角の影響は無いのかとか、赤丸確実に減っているのか(隠れて勉強してないか)とか、前は見えた結果が次やるときに見えなかったりとか、赤丸を増やしても減らしても黄三角が減ってわけ分からんとなったりとか、実験条件が定まらなかったりとか、そもそも記録が取れないとか、難解な英語論文を読んだりとか、nを稼ぐためにたくさん実験しなければとか、書類書いたりとか、論文書いたりとか、プレゼン練習したりとか、機械が壊れたとか、2年間仕込んだ実験がパーになったりとか、もうお金無いとか、研究者の皆様は色々と考えるべきこととか気苦労が耐えない訳ですが。

分かりにくいかもしれませんが、自分の理解をつらつらと書いてみました。
ご指摘、反論、ご意見等あればお願い致します。

2013年10月25日金曜日

命の授業

youtubeで見つけた情熱◯陸の動画

賛否はあると思うけど、生物を扱っている身としては、ぜひ多くの学校で行って頂きたい。
ある側面の生き物の本質をとらえていると思うので。
命の連鎖とか、儚さとか、ある意味での軽さとか、そういうもの。
藻の名前を覚えたり、アミノ酸の名前を覚えるよりも遥かに大事(その分野の方々には申し訳ないのですが)。

https://www.youtube.com/watch?v=1uX3bK7Yw-o

こういう動画は削除しないで欲しいですねw

一年半ぶりの更新